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振動測定とは?目的や変位・速度・加速度、測定方法など解説

2024.09.27

振動測定は、機械や構造の健全性を維持し、異常や故障を防ぐために必要な技術です。

しかし、振動測定の認知度はあまり高くなく、測定パラメーターには何があってそれで何がわかるのか?と質問されても、正しく答えられる人は多くないでしょう。

本記事では、振動測定の目的や基本となるパラメータである変位、速度、加速度について解説し、具体的な測定方法測定器の仕組み、注意すべきポイントについても紹介します。

振動測定に関わり始めたあなたの疑問に答える内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

振動測定とは?目的や3つのパラメータを解説

振動測定とは

振動測定とは、機械や構造物が正常に動作しているかを判断するために行われる重要な技術です。

特に機械の保守や故障予知、安全管理において非常に大きな役割を果たします。そのため、定期的な振動測定は、機械の寿命を伸ばし効率的な運用を維持するために欠かせません。

ここでは、振動測定の目的と3つの主要なパラメータについて解説します。

振動測定の目的

振動測定の目的は、機械や構造の異常を早期に検出し、予防的な対策を講じて故障を未然に防ぐことです。

振動測定によるデータを活用することで、機械の寿命を延ばし、安全な作業環境を維持することが可能になります。

振動測定における代表的な3要素を紹介します。

異常検出による予知保全

振動データを定期的に測定・監視することで、部品の摩耗や不具合を早期に発見し、故障の予兆を認識できます。

例えば、回転機械のベアリング(軸受)は振動測定の典型的なものです。ベアリングを長期間使用していると、焼き付きや破損によってトラブルを招き、機械全体の停止や大規模な修理が発生してしまう可能性があります。

振動測定により、このような異常を事前に観察でき、適切な部品交換タイミングや修理を行うことで、大規模なトラブルを未然に防ぐことが可能です。

機械の寿命延長

異常振動を初期に検出し、適切な対応を行うことで、機械全体の寿命を延ばすことができます。

例えば、ポンプやコンプレッサーなどの回転機械では、シャフトの不均衡や軸受けの不具合による振動が放置されると、部品の摩耗が進行し、機械全体に甚大な被害を与える可能性があります。

こうした問題を早期に発見し、修理や部品交換を適切なタイミングで行うことで、振動測定を行っている部品や装置だけではなく、周辺設備の寿命も最大限に伸ばすことが可能です。

安全性の向上

振動による不具合が大事故につながることを防ぐために、振動測定は安全な作業環境の維持に不可欠です。

産業用タービンの振動測定では、回転部品のバランスが崩れて異常振動が発生した場合、機械の破損や人身事故に繋がるリスクを早期に察知できます。

設計上は安全でも、実際に使ってみないとわからないという不安要素を取り除くのも振動試験の大切な目的なのです。

振動測定のパラメータ:変位・速度・加速度

振動測定では、主に「変位」「速度」「加速度」の3つのパラメータが重要視されます。

これらのパラメータはそれぞれ振動の異なる側面を表し、互いに時間的な微分・積分の関係にあります。これらを詳細に分析することで、振動の性質を把握し、適切な対策を講じることが可能です。

変位

変位は、振動する物体が基準位置からどれだけ移動したかを示す量です。

主に低周波の振動を際立たせるために用いられ、ゆっくりとした揺れや大きな動きを伴う振動の測定に適しています。

例えば、建築物や橋梁のような大型構造物の揺れや、機械設備の大きな振動動作を観察する際に変位測定が行われます。

変位を正確に測定することで、機械や構造物が許容範囲を超える異常な変動をしていないか確認することが可能です。

速度

速度は、単位時間あたりの変位の変化量を示し、振動エネルギーの強さを評価する指標となります。

中周波数帯の振動の観測に適しており、回転機械のバランス確認や異常検出に広く用いられています。

速度測定により、機械に振動がどの程度の影響を与えているかを評価し、過度な振動による疲労や損傷を未然に防ぐための対策を講じることが可能です。

加速度

加速度は、振動する物の速度の変化率を測定する指標です。

特に高周波数の振動を検出するのに優れており、軸受けやギアなどの部品の劣化や破損を早期に発見するために重要です。

加速度測定は、短期間で強い振動や衝撃を与える試験に適しており、実際に精密機械の状態監視や自動車・航空宇宙関連の振動評価に活用されます。

振動測定の方法は?測定器の仕組みも紹介

振動測定の方法

振動測定は、機械や構造の状態を診断するために必要不可欠な手法です。

振動の測定方法には、用途や目的に応じたさまざまな手法があります。

ここでは代表的な測定方法と、使用される測定器の仕組みについて解説します。

振動測定の方法

振動測定の方法は主に、以下の2つに分けられます。

・接触式測定
・非接触式測定

それぞれの特徴と使用するセンサーについて詳しく解説します。

接触式測定

接触式測定は、センサーを直接測定対象に取り付けて振動を検出する方法です。この方法は、振動の性質を高精度に把握できるため、多くの工業分野で使用されています。

以下の3種類のセンサーが使用されます。

変位センサー 主に低周波の振動を検出し、振動する物の位置の変化を測定します。機械や構造の変位測定に適しています。一般的な変位センサーには、電磁誘導式、静電容量式、光学式などがあります。
速度センサー 中周波数帯の振動測定に適しており、振動の強度やエネルギーを評価する際に使用されます。速度センサーは、機械の回転バランスや状態監視に活用されます。
加速度センサー 高周波数の振動を正確に測定できるため、機械の軸受けやギアなどの異常検出に役立ちます。加速度センサーは、圧電式が一般的で、広い周波数範囲での振動測定が可能です。
接触式測定のメリット ・高精度で振動測定が可能。
・広範囲の振動データを取得できる。
接触式測定のデメリット ・測定対象にセンサーを取り付けるため、取り扱いが難しい場合がある。
・測定対象によってはセンサー取り付けにより振動特性が変わる可能性がある。

非接触式測定

非接触式の振動測定は、センサーを測定対象に接触させずに測定する方法です。

この方法は、対象物への影響を最小限に抑えつつ、振動を正確に測定するために使用されます。

使用される測定器の種類例

レーザードップラ振動計 レーザー光を対象物に照射し、その反射光のドップラー効果を利用して振動の変位や速度を測定します。非接触で高精度な測定が可能なため、高速回転装置や微小部品の振動測定に適しています。
赤外線センサー 赤外線を使って対象物の動きを測定します。変位測定に用いられることが多く、温度の影響を受けにくいのが特徴です。
非接触式測定のメリット ・非接触で測定できるため、対象物に負荷を与えない。
・高速回転する装置や高温環境など、接触が難しい状況でも測定が可能。
非接触式測定のデメリット ・測定精度は接触式に比べてやや劣る場合がある。
・測定器の設置が難しい場合やコストが高いケースもある。

測定器の仕組み

振動測定に使用されるセンサーの仕組みは、振動の3つのパラメーター(変位、速度、加速度)を認識するために特化しています。

測定器は以下のような仕組みで動作します。

変位センサー 変位センサーは、物の体の振動によって起こる位置の変化を検知します。 電磁式や静電容量式のセンサーが一般的で、物の動きを電気信号に変換し、その変化量を測定します。
速度センサー 速度センサーは、振動によって発生する速度の変化を検出します。コイルを使用した電磁誘導によって、速度変化を電気信号に変換する仕組みを採用し、振動を効率的に測定できます。
加速度センサー 加速度センサーは、物体の振動により発生する加速度を感知します。圧電素子を利用し、加速度によって力を電気信号として測定する仕組みです。そのため、精密な異常検出に適しています。

振動測定の注意点!押さえておきたいポイント

振動測定の注意点

振動測定を行う際には、精度や信頼性を確保するためにいくつかの注意点があります。

測定の目的に応じた適切な方法や機器の選定環境は重要な項目であり軽視できません。

ここでは、振動測定時に押さえておきたいポイントをまとめて解説します。

測定の目的に応じたパラメータの選定

振動測定では、測定する対象や目的に応じて「変位」「速度」「加速度」のいずれかを選ぶ必要があります。

例えば、低周波の動きや大きな変位を伴う振動には「変位」が適しており、中周波数帯の機械の異常には「速度」が適しています。高周波数の細かな振動検出には「加速度」が有効です。

目的に合ったパラメータを検討することが、信頼性の高い結果を得るためには欠かせません。

測定環境の影響に注意

振動測定は、外部環境や温度、湿度などの影響を受けやすいため、測定環境には十分な注意が必要です。

例えば、外部からの騒音や振動が測定データへの影響を考慮する場合があります。時には測定環境を確保するために施設や設備を見直し、外部からの影響を考慮した対策を講じることが重要です。

測定器のキャリブレーションとメンテナンス

測定器の定期的なキャリブレーション(測定器の正確性確認と調整作業)とメンテナンスは、信頼性の高い測定結果を得るために忘れてはいけません。

測定器は使用や時間の経過により性能が劣化し、正確さを保つことが難しくなります。機械的な問題が起これば、測定結果に誤差が生じ、正確なデータ取得が困難になるでしょう。

例えば、キャリブレーションを忘れた振動センサーを使用すると、実際の振動レベルよりも低い値を示すことがあり、予期せぬ異常を引き起こす要因になりかねません。

正しい設置と取り付け

センサーや測定器の設置位置や固定方法によって測定結果が大きく変わるため、設置方法には特に注意が必要です。

センサーが正しく設置されていないと、振動を正確に測定できず、誤ったデータが取得される可能性があります。正確なデータが得られる位置を見極めて確実な固定を施し、安定した状態で使用することが重要です。

まとめ

振動測定は、対象物を揺らして壊れるかどうかを見るといった単純なものではありません。

目には見えない周波数や湿度、温度などの測定環境を整え客観的なデータから品質向上だけでなく安全面向上にも貢献しています。

様々な製品が生まれ、市場からの要求が高まれば振動測定の重要性はさらに高まることでしょう。

そんな激動のモノづくり業界を支えるあなたの一助になれれば幸いです。

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