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塩水噴霧試験とは?判定基準や評価項目、SST・CCTなどの違いも解説

2024.08.23

建物や設備の塗装や自動車部品、手持ち機材など屋外での使用が想定される製品は全て、過酷な屋外環境に耐える性能が求められます。

しかし、製品が外気に対してどの程度の耐久性をもつのかは、実際の使用環境による違いも多く、評価の難しいポイントです。

本記事では、耐久性評価の中でも特に、材料や製品の塩分に対する耐久性(耐食性)を評価するために使用される「塩水噴霧試験(SST)」の目的や規格、種類について解説します。

耐食性評価に興味がある方や、製品の塩水噴霧試験を検討中の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

塩水噴霧試験(SST)とは?目的や規格など紹介

塩水噴霧試験の目的

塩水噴霧試験(Salt Spray Test)とは、材料や製品に塩水を噴霧することで腐食を促し、耐食性を評価するための試験です。一般的には、金属やコーティング表面の耐食性の評価に用いられます。

塩水噴霧試験では、評価する試験片を塩水噴霧装置内に設置し、一定の時間にわたり濃度5%の塩化ナトリウム水溶液を塩水として噴霧し、腐食の進行を観察します。

試験時間は、製品規格や試験当事者の規定により決定。JIS Z 2371「塩水噴霧試験方法」による推奨時間として2時間、6時間、24時間、48時間、96時間、168時間、240時間、480時間、720時間及び1,000時間が挙げられています。また72時間といったメーカー独自の試験時間を設定するケースもあります。

コーティング塗膜などの耐久性評価を行う場合、JIS K 5600-5-6に定められるクロスカットを施し試験を行うのが一般的です。塗膜に一定の間隔で交差する切れ込みを入れ、塗膜の密着性を評価します。

塩水噴霧試験の目的

塩水噴霧試験は、金属材料やめっき皮膜、塗装皮膜を施した表面の耐食性を評価する試験です。

屋外における表面劣化の主要な要因の多くが大気中の塩分であり、海塩粒子、多積雪地方の融雪塩など、屋外で使用される製品をとりまく塩分は多岐に渡ります。

そのため自動車の外装材や足回り部品、塗装などについて、塩分による腐食評価を行うことで疑似的に屋外での耐久性評価を行うことが可能です。

塩水噴霧試験には、乾燥・湿潤・低温といった環境条件を変化させながら組み合わせることでより使用環境の気候を再現した複合サイクル試験などの種類があります。

塩水噴霧試験の規格

塩水噴霧試験は試験方法ごとに規格が定められているのに加え、材料によって試験方法も定められています。評価したい材料に応じた試験方法を選定しましょう。

(例)

規格 詳細
JIS Z 2371 塩水噴霧試験方法
JIS D 0201 自動車部品-電気めっき通則
JIS C 60068-2-11 環境試験方法(電気・電子)塩水噴霧試験方法
JIS C 60068-2-52 環境試験方法−電気・電子−塩水噴霧(サイクル)試験方法(塩化ナトリウム水溶液)
ISO 9227 人工大気における腐食試験-塩水噴霧試験

塩水噴霧試験の相当年数

塩水噴霧試験の相当年数

塩水噴霧試験の結果は、製品の耐食性評価として有効なデータではあるものの、実際の使用環境には塩分以外の外的要因も多く存在するため、直接耐用年数としての評価と関連付けるのは難しいです。

一般的には塩水噴霧試験240時間が大気曝露1年間に相当するという目安が使われることがあります。この目安は、財団法人 日本ウエザリングテストセンターの公開している「促進曝露試験ハンドブック」に基づいており、特定の条件下での金属材料及び塗装の大気曝露試験と塩水噴霧試験の結果に相関が見られることが理由です。

具体的には、銚子及び直江津における大気曝露1年間の腐食量と、塩水噴霧試験240時間の腐食量がほぼ同等であるとされています。ただし、腐食形状が異なるなど、厳密には同一の結果ではないことに留意が必要です。

塩水噴霧試験の判定基準や評価項目

塩水噴霧試験の判定基準や評価項目

塩水噴霧試験には、試験後の評価についての基準が統一されているわけではなく、評価は試験当事者があらかじめ決めた基準によって行われることが多いです。

ただし、業界標準や規格(例:JIS、ASTM、ISOなど)で標準的な評価方法が設定されている場合もあります。

よく判定基準に用いられる項目は以下です。

外観観察 錆の色、錆の量、塗膜の膨れ、剥離などを目視で確認。
レイティングナンバー法 腐食面積を標準図と比較し、腐食の進行度合いを数値化して評価。
腐食減量法 試験前後の質量を比較し、腐食による減量を評価。

塩水噴霧試験の種類や違いについて解説

塩水噴霧試験の種類

塩水噴霧試験は、耐食性を評価するためにいくつかの手法が存在します。代表的な試験方法とそれぞれの特徴や違いについて解説しているので参考にしてください。

複合サイクル試験(CCT)

複合サイクル試験(Cyclic Corrosion Test)とは、塩水噴霧試験に周期的な環境条件(例えば、乾燥、湿潤、冷却、加熱など)を加えた試験方法です。

塩水噴霧、乾燥、湿潤、冷却など、試験片が晒される環境を繰り返し変化させることで、単一の条件で試験を行う塩水噴霧試験とは異なり、現実に近い腐食の進行を観察することが可能です。

この試験方法により、製品の耐食性や耐久性をより現実的な条件下で評価することができます。

複合サイクル試験方法 各規格で定められた塩水噴霧、湿潤、乾燥などの条件を一定のサイクルで繰り返し、試験片の腐食耐性を評価します。
代表的な規格例 ・JIS H 8502:めっきの耐食性試験方法。複合サイクル試験の条件が規定されています。
・JIS K 5600-7-9:塗料一般試験方法。塗装やコーティングの耐食性を評価するための試験条件が規定されています。
試験事例 自動車部品や金属材料の評価によく使用されます。

キャス試験(CASS)

キャス試験(Copper-Accelerated Acetic Acid Salt Spray test)は、塩水噴霧試験の一種で、塩水に酢酸と塩化銅を添加し、腐食の進行を促進するための酸化力を高めた水溶液を用いて行われる試験です。

主に厳しい環境での使用が想定されるメッキやニッケル、クロムなど高耐食性材料の評価に使用されます。特に、通常の塩水噴霧試験では評価が難しい材料やコーティングの耐食性評価に効果的です。

複合サイクル試験方法 塩水噴霧試験で用いられる5%の塩化ナトリウム水溶液に0.205g/Lの塩化銅を加え、さらに酢酸でpH3.0に調整した水溶液を試験片に噴霧し腐食耐性を評価します。
代表的な規格例 ・JIS H 8502:めっきの耐食性試験方法
・JIS H 8681-2:アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐食性試験方法
試験事例 耐食性が高く、塩水噴霧試験では評価の難しいめっきや塗装の評価によく使用されます。

中性塩水噴霧試験(NSS)

中性塩水噴霧試験(Neutral Salt Spray test)は、中性の塩水を用いる塩水噴霧試験であり、多くの腐食耐性評価に用いられる標準的な試験方法です。水溶液の酸化力が比較的低いため、時間をかけて評価する方法が一般的です。

複合サイクル試験方法 pHを6.5〜7.2に調整した5%塩化ナトリウム溶液を試験片に規定時間噴霧し、腐食耐性を評価します。
代表的な規格例 ・JIS Z 2371:塩水噴霧試験方法
・JIS K 5600-7-1:塗料一般試験方法
試験事例 金属製品や塗装された表面の基本的な耐食性評価に広く使用されます。

酢酸酸性塩水噴霧試験(ASS test)

酢酸酸性塩水噴霧試験(Acetic Acid Salt Spray test)は、塩水に酢酸を加えて水溶液の酸性度を高めることで、より厳しい腐食環境を再現する塩水噴霧試験です。

特に防錆コーティングや耐食性の高い材料、屋外での使用が想定される材料の腐食耐性を評価するために使用されます。

複合サイクル試験方法 5%塩化ナトリウム水溶液に酢酸を加え、pHを3.0に調整。通常の塩水噴霧試験同様に試験片に水溶液を噴霧し、耐腐食性を評価します。
代表的な規格例 ・JIS Z 2371:塩水噴霧試験方法
・JIS H 8502:めっきの耐食性試験方法
試験事例 防錆コーティングなど腐食耐性が高く屋外使用が想定される材料に使用されます。

まとめ

本記事では、材料や製品の腐食耐性を評価するための重要な試験方法である、塩水噴霧試験についてまとめました。

材料や製品が使用される環境に応じた適切な腐食耐性評価は、安全な製品設計には必要不可欠です。

塩水噴霧試験を検討している方はぜひ参考にしてください。

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