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衝撃試験とは?シャルピー・アイゾットなど種類ごとの内容など解説
身の回りの建物や製品は、その流通過程や日常使用などの状況において、人が手に持つ、人に踏まれる、物がぶつかる、落下するなど常にさまざまな衝撃に晒されています。
そのため製品設計を行うにあたっては、使用する材料ごとにどんな種類の衝撃にどの程度耐性があるのかを知ることはとても重要です。
本記事では衝撃試験の目的やさまざまな衝撃試験の種類について紹介しています。
さまざまな材料に対する衝撃試験を検討している、どのような衝撃試験機を選定すれば良いかわからない方はぜひ参考にしてください。
衝撃試験とは?目的や規格など紹介
衝撃試験とは、さまざまな材料がどんな種類の衝撃に対して、どの程度の耐久性を持つのかを試験機を用いて評価する試験です。
ここでは、衝撃試験の目的や規格について紹介します。
衝撃試験の目的
衝撃試験の一番の目的は、材料の耐衝撃性を明らかにし材料選定に役立てることです。
出荷した製品が輸送の衝撃に耐え切れず壊れてしまったり、製造した車両が走行し、人が乗った衝撃で変形してしまったりしては元も子もありません。
そのため製品設計においては、その製品の使用環境で想定される衝撃によって製品が壊れてしまわないために、材料の耐衝撃性を評価する必要があります。
もちろん衝撃には強さの他にもさまざまな種類があり、打撃や突き刺し、引張など環境によって加わる衝撃も多岐にわたります。
また、材料が衝撃によって破壊に至るプロセスの評価も重要です。
せん断破壊された断面、砕け散った材料の粒径、変形の仕方など、万が一破壊に至った場合でも安全に使用できるように、衝撃試験によって材料を評価し製品を設計する必要があります。
衝撃試験機の規格
衝撃試験には、試験の種類ごとにJIS規格に定められた方法があるのに加えて、試験材料によってもさらに細かく規格が定められています。
例 ↓
規格 | 詳細 |
---|---|
JIS Z 2242 | 金属材料のシャルピー衝撃試験方法 |
JIS K 7061 | ガラス繊維強化プラスチックの シャルピー衝撃試験方法 |
JIS K 7110 | プラスチック-アイゾット衝撃強さの試験方法 |
JIS K 7077 | 炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法 |
JIS K 7124-1 | プラスチックフィルム及びシート-自由落下のダート法による衝撃試験方 |
これらの基準に適合した衝撃試験を行わなければ適切な材料評価とは言えないため、衝撃試験機はさまざまな規格を満たす製品がラインナップされています。
そのため、評価したい材料に合わせた衝撃試験機の機種選定が大切です。
衝撃試験の種類|工業分野はシャルピー・アイゾット
工業分野における衝撃試験で有名なのがシャルピー・アイゾット衝撃試験で、これは振り子式のハンマーによって材料の耐衝撃性を評価するものです。
その他にも衝撃試験にはさまざまな種類があり、物体が晒される多様な衝撃について評価を行うことができます。
シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験とは、試験片に振り子式のハンマーで衝撃を与えて破壊し、破壊に要したエネルギーから試験片の靭性を評価する衝撃試験です。
角柱状に加工した試験片の両端を固定し、試験片の中心をめがけてハンマーを振り下ろします。衝突により試験片を破壊した後に振り上がったハンマーの高さから、破壊に要したエネルギー量を求めることが可能です。
試験材料によっては、試験片のハンマー衝突位置の反対側にV字もしくはU字の切り欠き(ノッチと呼ばれます)を入れることで、応力を集中させ正しい試験結果を得ることができます。
アイゾット衝撃試験
アイゾット衝撃試験とは、試験片の形状や振り子式のハンマーを使用する点がシャルピー衝撃試験と同様ながら、主にプラスチックなどの材料の衝撃強度を評価するための衝撃試験です。
シャルピー衝撃試験との違いは、角柱状に加工した試験片の両側ではなく片側を固定し、試験片の固定されていない側にハンマーによる衝撃を加える点です。
また、ハンマーにより衝撃を加えるのが試験片のノッチ側という違いもあります。
シャルピー衝撃試験同様に、振り子式のハンマーが試験片を破壊後に振り上がった高さから破壊に要したエネルギーを求めます。
引張衝撃試験(テンサイル試験)
引張衝撃試験とは、固定した試験片に対し、引張方向に振り子式のハンマーによる引張衝撃を加え、破壊に要したエネルギーから材料の靭性を評価する衝撃試験です。
試験片の両端を固定したハンマーのヘッドを振り下ろし、支持台にて試験片片側の固定部分が衝突することで試験片に引張衝撃を加えるインヘッド法。
そして、両端を固定された試験片片側の固定部分に対してハンマーによる引張衝撃を加えるインベース法があります。
シャルピー、アイゾット衝撃試験での評価が困難な薄い材料や、柔らかい材料の評価に用いられます。
また衝撃を加えずに治具で試験片に引張荷重をかけ、破断に至る過程を評価する試験をテンサイル試験(引張試験)と呼ぶこともあります。
落球衝撃試験
落球衝撃試験とは、試験片に金属の錘を落下させることで落下衝撃に対する耐久性を評価する試験です。
錘の重さを変えたり、落下高さを変えたりすることで、さまざまな条件で自由落下による衝撃を模した耐久性評価を行うことができます。
硬質プラスチックなどの材料に加えて、コーティング表面の耐衝撃性評価に利用することもできます。
デュポン衝撃試験
デュポン衝撃試験とは、試験片に錘を落下させることで衝撃に対する耐久性を評価する試験です。
中心に凹みのある受け台と、凹みに合う形状の突起を持つ撃ち型の間に試験片を挟み、錘を撃ち台の上に落下させて試験片の変形や表面の破損を観察します。
変形に対する耐久性評価をすることができ、プラスチックや塗料の強度評価に用いられることが多いです。
ダートインパクト試験
ダートインパクト試験とは、板状の試験片に対し半球状の錘(ダート)を落下させる試験です。
ダートの重さや落下させる高さを変化させ、材料の貫通状態や破損状態から耐衝撃性を評価します。プラスチック板やガラスなど板状の材料に用いられます。
衝撃試験の設定値・用語について
衝撃試験で用いられる設定値や用語についていくつかご紹介します。
加速度(m/s^2)
ある物体同士がぶつかる際、物体には衝撃加速度パルスという波が発生します。
衝撃加速度パルスとは、ごく短時間の間に発生する急激な加速度変化であり、加速度とパルスの作用時間から構成されます。
この衝撃加速度パルスの大きさや持続時間が物体ごとの許容値を超えると、物体は衝撃に耐え切れず破損します。
加速度とはこの衝撃加速度パルスを構成する要素であり、単位時間あたりの速度変化を表します。
この値が大きいと、単位時間あたりの速度変化が大きい状態、つまり急激に速度が上昇したことを意味します。
わかりやすい言葉で例えると、加速度が大きいとは、より強く揺さぶられた状態と言うことができます。
作用時間
作用時間とは衝撃加速度パルスを構成する要素の一つで、加速度の伝わっている時間を示します。
加速度を縦軸、作用時間を横軸として衝撃加速度パルスを表すと、作用時間が長いほど波形面積が大きくなります。
作用時間が長いほど、より幅広い固有振動数をもつ物体へ衝撃加速度パルスが伝達されやすくなります。
パルス形状(正弦半波、台形波、のこぎり波)
衝撃試験では、3種類の衝撃加速度パルスの形状を用いて評価を行います。
一般的な衝撃である正弦半波は工業製品全般に使用され、のこぎり波は各部品に均一に衝撃を伝える性質があり主に航空分野で使用されます。
台形波は、急激に加速し、その後一定の速度で持続し、再度急激に減速する特性を持ち、厳しい条件の衝撃パルスとして、限界許容度を測定する際などに使用されています。
まとめ
今回は材料に対して行う耐衝撃性の評価である、衝撃試験についてご紹介しました。
製品が使用される環境に応じた、適切な衝撃試験を行うことが安全な製品設計につながります。
弊社振動試験では物体が床や壁に衝突した衝撃を再現するため、シャルピー・アイゾット衝撃試験のような物体に直接打撃が加わる衝撃試験が行えないものの、ご要望によっては衝撃試験機の導入・評価も検討いたします。
評価したい材料や製品、衝撃の種類がある際はぜひご相談ください。