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塵埃試験とは?目的やダスト(粉塵)の種類、規格など解説!
屋外で使用される電子機器や自動車に使用される部品など、過酷な環境で使用される製品には、内部への塵や埃の侵入により故障しない性能(耐塵性能)が求められます。
そのためこれらの製品の設計においては、使用環境で想定される塵埃への十分な耐久性を持たせることが重要です。
本記事では製品の耐塵性能を評価する試験である、塵埃試験の目的や代表的な規格、具体的な試験方法について詳しく解説します。
製品の塵埃試験を検討している方や、塵埃試験機の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
塵埃試験とは?目的や規格
塵埃試験とは、製品が塵や埃などの微細な粒子に対してどれぐらい耐性があるのかを評価する試験です。耐塵試験と呼ばれることもあります。
電子機器や自動車部品、工業機器などにとって、使用環境における塵埃の影響は避けられない問題であり、塵埃環境下でどれほどの性能を維持できるかは重要な性能の一つです。
塵埃試験を通じて、使用が想定される環境下での製品の耐久性を評価し設計に活かすことができます。
塵埃試験の目的
塵埃試験の目的は、塵埃環境下で製品に塵や埃が侵入しないか、製品への塵や埃の侵入による性能低下や影響がどの程度であるかを評価することです。
塵埃試験で評価される防塵・耐塵性能は、特に自動車部品や工場で使用される設備など、塵埃が多い環境での使用が想定される製品には重要な性能。
過酷な環境でも高い信頼性と安全性を持つ製品を設計するためには、塵埃試験が不可欠です。また製品の保護等級を規定するための試験として、耐塵試験という言葉が使用されることもあります。
塵埃試験の規格
塵埃試験には用途や製品に対応して規格が定められています。代表的な規格は以下の通りです。
規格 | 詳細 | 内容 |
---|---|---|
ISO 16750-4 | 路上走行車-電気・電子機器の環境条件及び試験-第4部:気候的負荷 | 路上走行車に搭載される電気・電子機器の温度、湿度、砂塵、雨水浸透などの環境条件に対する試験方法を規定。塵埃試験も含まれるが、気候負荷全般に対応。 |
JIS D 5020 | 自動車部品−保護等級 | 自動車の電気機械器具の外郭への異物や埃、水に対する保護等級を規定。 |
JIS C 60068-2-68 | 環境試験方法―電気・電子― 砂塵試験 | 電気・電子製品の防塵性能、耐塵性能についての試験方法を規定。 |
JIS D 0207 | 自動車部品の防塵および耐塵試験通則 | 自動車部品の防塵性能、耐塵性能についての試験方法を規定。 |
塵埃試験方法の種類と規格
塵埃試験には製品への塵埃の当て方が異なる浮遊試験と気流試験という2つの試験方法があります。
それぞれの特徴や規格について解説します。
浮遊試験
浮遊試験とは、製品が空気中に浮遊する微細な塵や埃にどれぐらい耐塵性があるのかを評価する試験方法です。
浮遊試験では、用意した試験ダストを塵埃としてエアにより吹付けることで、試験機内を塵埃を含む空気で満たします。その中に試験する製品を置き、一定時間後に製品が正常に動作するかを確認します。
浮遊試験は、空気中の砂埃が多く、製品に堆積してしまうような環境での使用が想定される製品の評価に用いられます。
代表的な規格としては、以下の通りです。
・JIS D 0207:自動車部品の防塵および耐塵試験通則
・JIS D 5020:自動車部品−保護等級
気流試験
気流試験とは、製品が塵埃を含んだ気流条件下でどれぐらい塵や埃に耐えられるかを評価する方法です。
気流試験では、ブロアなどを使用し試験ダストを塵埃として直接製品に一定時間吹付けることで、製品への塵や埃の侵入がどの程度防げているかを評価します。
気流試験は、特に自動車部品や建設機械など、風や砂埃が多い環境で使用される製品の評価に用いられます。
代表的な規格としては、以下の通りです。
・JIS D 0207:自動車部品の防塵および耐塵試験通則
・JIS C 60068-2-68:環境試験方法―電気・電子― 砂塵試験
試験ダスト(粉塵)の種類
JIS Z 8901 試験用粉体及び試験用粒子で規定される試験ダストについて解説します。
試験ダストは計15種類が規定されていて、製品ごとに想定される使用環境に合わせて試験に使用するダストを選定し、塵埃試験を行います。
種類 | 試験材料 | 大きさ(μm) | 濃度(mg/㎥) |
---|---|---|---|
1種 | けい砂 | 185~200 | 2.6~2.7 |
2種 | けい砂 | 27~31 | 2.6~2.7 |
3種 | けい砂 | 6.6~8.6 | 2.6~2.7 |
4種 | タルク | 7.2~9.2 | 2.7~2.9 |
9種 | タルク | 4.0~5.0 | 2.7~2.9 |
5種 | フライアッシュ | 13~17 | 1.95 以上 |
10種 | フライアッシュ | 4.8~5.7 | 1.95 以上 |
6種 | 普通ポルトランドセメント | 24~28 | ― |
7種 | 関東ローム | 27~31 | 2.9~3.1 |
8種 | 関東ローム | 6.6~8.6 | 2.9~3.1 |
11種 | 関東ローム | 1.6~2.3 | 2.9~3.1 |
12種 | カーボンブラック | ― | ― |
15種 | 混合ダスト | ― | ― |
16種 | 重質炭酸カルシウム | 3.6~4.6 | 2.7~2.8 |
17種 | 重質炭酸カルシウム | 1.9~2.4 | 2.7~2.8 |
けい砂
けい砂は、SiO2 95%以上の良質なけい砂を粉砕後に分級(粒径ごとに分別)したものです。粒径により1種~3種の3つに分類。この分類は、粒径の範囲によって決定されます。
けい砂粒子は硬度が高く、粒子形状に角があるため、材料の摩耗を促進するという特徴があります。
屋外使用による砂埃の影響を想定した試験に使用されることが多く、想定する環境に応じて粒径を選定します。
タルク
タルクは、鉱物であるタルク(滑石)を粉砕後に分級したもので、一般的には顔料や塗料の材料として利用されています。粒径により4種、9種に分類。
タルクは鉱物の中でもっとも硬度が低く、粉末は空気中に拡散しやすい性質があります。粒子形状は不規則な扁平状で、固体材料に付着しやすく、付着面は潤滑性があるのが特徴です。この特性により、タルクは集塵機や除塵機の性能評価において、粉体の挙動を再現するために多く利用されます。
フライアッシュ
フライアッシュは、石炭を燃焼する際に生じる灰の粉を集め、分級したものです。粒子は球形で、粒径により5種、10種に分類されます。
フライアッシュは主にコンクリートに添加することで耐久性向上に使用されます。塵埃試験においては、燃焼排ガス中のダストを想定した試験に使用。この試験では、フライアッシュの球形粒子が空気中にどのように拡散し、機器や素材に付着するかを評価するために使用されます。
普通ポルトランドセメント
普通ポルトランドセメントは、塵埃試験によく使われる粉体です。
代表的な水硬性セメントであり、工業分野で最も広く使用されているセメントです。石灰石・粘土・鉱滓などを粉砕、焼成することで製造されています。
関東ローム
関東ロームは、関東地方に広く分布する火山灰土壌です。土壌より採取後に800℃で焼成し粉砕、分級したものを使用。粒径により7種、8種、11種に分類されます。
関東ロームは、主に換気用エアフィルターやエアクリーナーの濾過性能評価に使用される粉体です。塵埃試験においては路上で発生する粉塵や屋外および屋外から屋内に入った粉塵を想定した試験に使用されます。
この試験により、フィルターの実際の使用環境下での効果を評価することが可能です。
カーボンブラック
カーボンブラックは、ゴムを補強する添加剤として利用される炭素の微粒子です。インクや塗料、プラスチックの着色剤としても使用されます。
燃焼により生じるススであり、煤煙を扱う製品の性能評価に用いられることが多い粉体です。塵埃試験においては、燃焼装置の排気や内燃機関の排出ガスに含まれるスス状物質の影響を想定した試験に使用されます。
特にフィルターやエンジン部品など、煤煙に晒される可能性のある製品の耐久性や性能を評価する際に用いられます。
混合ダスト
混合ダストは、綿ぼこりや土ぼこりなどが混合されたもので、一般的な粉塵を想定した試験で使用されます。
通常、混合ダストは試験目的に応じて特定の成分比率や粒径で標準化されており、例えば電子機器やフィルターの防塵性能や耐久性を評価する際に使用されます。
重質炭酸カルシウム
重質炭酸カルシウムは、良質の石灰石を粉砕後に分級したものです。粒径により16種、17種に分類されます。
原料である石灰石は日本で多く産出するため、古くから工業材料として顔料やゴム充填などに幅広い製品に利用。
そのため、工場内で発生する粉体や粉塵の代表例として、粉体関連の研究や塵埃試験に数多く用いられています。特に、フィルターの性能評価や空気中の粒子挙動の研究などで使用されています。
まとめ
製品や材料が塵や埃に対してどれほどの耐性を持つかを評価する試験、塵埃試験についてまとめました。
電子機器・自動車部品・工業機器などの製品にとって、実際の使用環境での信頼性と耐久性はなによりも大切です。
当社では塵埃試験の受託を行っております。
塵埃試験による製品の耐塵性能評価をご検討中の方は、ぜひご相談ください。