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耐久性試験の目的や種類とは?具体例やJIS規格など紹介
日常生活やさまざまな仕事の現場で使用される製品には、突然故障したり、短期間で劣化したりしない耐久性が求められます。
しかし、製品の故障原因となるさまざまなストレスは、使用される環境や使用状況によって異なり、定量的な評価が難しいです。
本記事では、さまざまな環境における製品の耐久性を評価する手法である、耐久性試験の種類や方法について解説します。
耐久性試験検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
耐久性試験とは?
耐久性試験とは、製品や部品が長期間にわたって繰り返し使用された場合に、その性能がどの程度維持されるかや、どのように劣化するか、またどのように破壊にいたるかを評価する試験です。
耐久性試験では、さまざまな環境条件や負荷を調整し、実際の使用状況を模擬的に再現したテストを行います。
これにより、その製品や部品が一定の耐久性基準を満たしていることを確認し、製品の信頼性や安全性を示すことが可能です。
耐久性試験では主に以下のような項目について評価を行い、製品が長期にわたる使用に耐え、ユーザーが安心して使用できるかという信頼性を確認します。
荷重 | 製品がどの程度の重さや圧力に耐えることができるかをテストします。特に構造物や機械部品においては、過剰な荷重がかかった場合の変形や破損を評価します。 |
速度 | 特に引張などの荷重試験を行う場合、荷重を加える速度も評価ポイントとなります。樹脂などの材料は引張速度により引張強度が変化する性質があるため、実用範囲で荷重の速度を調節して評価する必要があります。 |
変位 | 製品が使用中にどの程度変形するかを評価します。繰り返し使用される部品では、変位は故障につながるケースが多いため厳しく評価されます。 |
繰り返し回数 | 製品に繰り返し負荷をかけて耐久性をテストします。ボタンやスイッチなど、繰り返しの負荷が前提となる製品においては重要な評価となります。 |
耐久性試験の目的
耐久性試験の目的は、製品や部品が実際の使用環境でどの程度の耐久性を持つのかを確認し、ユーザーに信頼性や安全性を示すことです。
また、耐久性試験により製品が正常に機能し続ける期間を評価することで、使用中に発生しうる不具合や故障を事前に予測することもできます。
特に、自動車や航空、医療機器の分野など製品の故障が人命に関わる分野においては、耐久性試験は不可欠です。
これらの目的のために、多くの業界では製品の耐久性を示す基準としてJIS規格や国際規格(ISO、IEC)で定められた耐久性試験への適合を導入しています。業界や製品によって適用される規格は異なりますが、以下のような規格が一般的です。
例
JISA1456 | 木材・プラスチック再生複合材の耐久性試験 |
JISS1206 | オフィス用回転椅子の安定性や強度の耐久性の試験 |
JIS C 60068-2-2 | 発熱がない・あるそれぞれの供試品に適用する高温試験 |
耐久性試験の種類を一部紹介
耐久性試験には、製品や部品がさらされるさまざまな環境条件や使用条件における耐久性を評価するために、いくつかの種類があります。
温度や湿度に関係する耐久性については、温度・湿度の環境条件を変化させることで製品への影響を評価する試験(例:熱衝撃試験、温度サイクル試験)を実施し、過酷な使用状況を再現することで製品の動作や耐久性を確認します。
機械的ストレスや環境耐久性についても、振動試験や塩水噴霧試験といった使用状況を模した試験によって、物理的な力や外気環境、腐食性の環境が製品に与える影響を評価。くわえて、化学的ストレスや電気的ストレスなどの要因に対しても耐久性試験が行われ、製品の信頼性が総合的に評価されます。
評価する耐久性の種類ごとにいくつか代表的な耐久性試験を紹介します。
種類1.温度・湿度関連の耐久性試験
温度や湿度に関連する耐久性試験の例を解説します。
温湿度の変動は多くの製品にとって避けては通れない問題であり、電気製品や金属部品、繊維製品など幅広い分野で温度、湿度関連の耐久性試験が行われています。
熱衝撃試験
熱衝撃試験は、急激な温度変化に対する製品の耐久性を評価する試験です。
製品や部品の温度を高温から低温へ、またはその逆へと急激に温度を変化させることで、熱膨張や収縮による影響を評価します。通常数秒から数分の短期間で温度変化を行うため、製品が急激な温度変化に対する耐性を評価する際に有効です。
試験方法 | 高温と低温の温度差を繰り返し試験対象に与える。 |
評価項目 | 熱による膨張や収縮、材料の亀裂や破損の有無。 |
規格例 | JISC60068-2-14 環境試験方法-電気・電子-第2-14部:温度変化試験方法 |
温度サイクル試験
温度サイクル試験は、繰り返しの温度変化に対する製品の耐久性を評価する試験です。
製品や部品の温度を一定範囲で繰り返し変化させることで、長期間の温度変動による劣化や不具合を評価します。
熱衝撃試験よりも緩やかな温度変化を行い、通常は数時間から数日のサイクルで行われるため、実際の使用環境に近い状況を再現します。
試験方法 | 一定サイクルでの温度変化を加える。 |
評価項目 | 材料の変形、接続部の剥離、電気特性の変化。 |
規格例 | JISC60068-2-30 環境試験方法-電気・電子-第2-30部:温湿度サイクル |
高低温試験
高低温試験は、極端な高温または低温環境下で、製品が正常に機能するかを評価する試験です。
製品を一定時間高温や低温にさらし、その間に材料特性の変化や動作異常がないかを確認。動作中の機能確認や、作動していない状態での材料や電子部品の劣化を評価する際に使用されます。
試験方法 | 高温や低温環境に一定時間製品を曝す。 |
評価項目 | 高温・低温環境下での動作確認、材料の劣化、電子回路の安定性。 |
規格例 | JISC60068-2-1 環境試験方法-電気・電子-第2-1部:低温(耐寒性)試験方法JISC60068-2-2 環境試験方法-電気・電子-第2-2部:高温(耐熱性)試験方法 |
種類2.機械的ストレス耐久性試験
機械的ストレスに関連する耐久性試験を解説します。
主に機械部品にとっては重要な耐久性ですが、輸送や使用中の振動など、電気部品にとっても重要な評価項目となります。
振動試験
振動試験は、製品が輸送中や使用中に受ける振動に対する耐久性を評価する試験です。
正弦波やランダム波など特定の振動波形を加え、部品の緩みや故障が起きていないかを確認します。周波数範囲や振幅も試験の重要なパラメータであり、製品が実際の使用環境に近い振動にどれだけ耐えられるかを評価します。
試験方法 | 振動を試験対象に与える。 |
評価項目 | 接続部の緩み、構造の破損、動作不良。 |
規格例 | JISC60068-2-6 環境試験方法-電気・電子-第2-6部:正弦波振動試験方法 |
衝撃試験
衝撃試験は、製品の落下や衝突などの衝撃に対する耐久性を評価する試験です。衝撃を受けた際の製品の状況を確認し、破損や性能低下の有無を調べます。落下高さや衝撃力の設定に基づき、製品の耐衝撃性能を評価します。
試験方法 | 製品に対して衝撃を加える。 |
評価項目 | 部品の破損、外観の損傷、機能の低下。 |
規格例 | JISC60068-2-27 環境試験方法-電気・電子-第2-27部:衝撃試験方法 |
引張試験
引張試験では、製品にかかる引張負荷に対する耐久性を評価します。
材料を引っ張り、破断にいたるまでの引張負荷を測定し、引張に対する製品の耐久性を確認します。
試験方法 | 引張による機械的ストレスを試験対象に与える。 |
評価項目 | 引張強度、破断点、変形量。 |
規格例 | JISK7160 プラスチック-引張衝撃強さの試験方法 |
種類3.環境耐久性試験
外気環境に関連する耐久性試験を解説します。主に屋外で使用される製品や部品に対して行われる耐久性試験です。
長い時間外気環境にさらされることで起こる製品の変化を、過酷な環境を再現することで短時間で評価することができるため、加速試験とも呼ばれます。
耐候性試験
耐候性試験では、紫外線や雨、風などの屋外環境にさらされた製品の耐久性を評価します。
屋外で使用される製品や部材の性能劣化や色あせを促進させ、実際に長時間使用した場合の劣化具合を確認します。
試験方法 | 紫外線、水、風などを製品に与える。 |
評価項目 | 色あせ、表面劣化、素材の耐久性。 |
規格例 | JISK7350-1 プラスチック-実験室光源による暴露試験方法 |
塩水噴霧試験
塩水噴霧試験では、製品を塩水にさらすことで、製品が腐食や錆にどの程度耐えられるかを評価します。
自動車部品など屋外で使用される金属部品の耐久性確認に用いられます。
試験方法 | 製品に塩水を噴霧する。 |
評価項目 | 腐食、錆の発生、表面の劣化。 |
規格例 | JISZ2371 塩水噴霧試験方法 |
湿熱試験
湿熱試験では、高温、高湿度の環境に対する製品の耐久性を評価します。
特に電子機器においては、高温による動作不良や湿度による絶縁劣化、腐食、結露の影響などが重要な評価項目となります。
試験方法 | 製品を高温かつ高湿度な環境に曝す。 |
評価項目 | 湿気による劣化、電子回路の動作不良、素材の変質。 |
規格例 | JISC60068-2-78 環境試験方法-電気・電子-第2-78部:高温高湿(定常)試験方法 |
まとめ
本記事では、製品や部品が長期間にわたって信頼性を保ち、さまざまな環境や物理的なストレスに耐えられるかを評価する、耐久性試験について解説しました。
温度や湿度、機械的ストレス、さらには厳しい自然環境を再現した試験にいたるまで、多様な耐久性試験によって身の回りの製品の品質が保たれています。
これらの耐久性試験の結果により、製品の安全品質は向上し消費者やユーザーが安心して製品を使用できることに繋がっています。