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加速度センサーの主な種類と「仕組み」の違い(バルク技術 vs MEMS技術)

2026.08.21

振動試験

はじめに:バルク技術とMEMS技術について

加速度センサーの性能や用途を決定づける技術基盤は、大きく分けて「バルク技術」「MEMS技術」の2つに分類されます。それぞれの領域には、異なる加工アプローチや動作原理に基づいた多種角的な技術が存在します。

本記事では、高精度・高耐久を誇るバルク型(圧電式)の基本・派生構造から、小型・量産性に優れるMEMS型の各種検出原理まで、それぞれの仕組み、メリット、デメリットを網羅して解説します。

バルク技術(バルク圧電型)の主要構造

バルク圧電型は、圧電セラミックスや水晶などの単結晶・ブロック状の「圧電素子」と「可動質量(マス)」を組み合わせた構造です。加速度によって圧電素子に加わる応力の方向やメカニズムによって、以下のタイプに分類されます。

① 圧縮型(Compression Mode)

圧電素子の上下にマス(重り)とベース(底面)を配置し、上下方向の加速度によって圧電素子をサンドイッチ状に押し潰したり引っ張ったりする最も伝統的な基本構造です。

  • 仕組み: 上下方向の加速度が生じると、マスの慣性力によって圧電素子に「圧縮力・引張力」が加わり、その力に比例した電荷が発生します。
  • メリット: 構造がシンプルで剛性が極めて高く、高い固有振動数を持ちます。高周波の振動や高G衝撃の計測に威力を発揮します。
  • デメリット: 設置面の歪み(ベースストレイン)や周囲の熱変化(熱膨張)の影響が直接素子に伝わりやすく、低周波数領域でノイズが発生しやすい傾向があります。

② せん断型(Shear Mode)

センターポスト(中央の柱)の側面に圧電素子とマスを配置し、横方向の滑り運動(せん断力)を利用する構造です。現代のバルク型の主流となっています。

  • 仕組み: 加速度が加わると、マスが上下に動こうとすることで圧電素子の接着面・接触面に沿って「ズレ(せん断)」が生じ、電荷が発生します。
  • メリット: 圧電素子が底面から物理的に分離しているため、ベースの歪みや急激な温度変化(熱衝撃)の影響をほとんど受けず、極めて高い測定安定性を誇ります。
  • デメリット: 側面への固定が必要なため、圧縮型に比べて製造および組み立て精度が要求されます。

③ 曲げ型(Bending / Flexural Mode)

薄い圧電素子を貼り付けた板(ビーム)の先端にマスを取り付け、板が「しなる(曲がる)」歪みを捉える構造です。

  • 仕組み: 加速度によってマスが動くと、ビームが弓なりに曲がり、表面の圧電素子に引き伸ばし・縮みの応力が生じて電荷が発生します。
  • メリット: てこの原理により、微小な加速度でも大きな電気信号を取り出せます。高感度かつ超低周波数帯域の微少振動の検知に特化しています。
  • デメリット: 構造的に剛性が低いため衝撃に弱く、測定できる周波数範囲(帯域)が狭いのが難点です。

④ 【派生】リング型せん断(Annular Shear)

せん断型(Shear Mode)の信頼性を極限まで高めた発展形です。

  • 仕組み: センターポストの周囲を「リング状(円環状)の圧電素子」と「リング状のマス」で全周から包み込むようにかしめて固定します。
  • メリット: せん断型の耐環境性能(歪み・温度変化への強さ)を維持しながら、さらなる小型軽量化と高い機械的強度を両立します。現代の汎用・高精度加速度センサーの標準構造です。
  • デメリット: リング状部材の微細加工や精密な圧入技術が必要となり、コストがやや高くなります。

⑤ 【派生】三軸一体型(Triaxial)

1つのハウジング(筐体)内に、X軸・Y軸・Z軸の3方向を独立して測定できるエレメントを内蔵した構造です。

  • 仕組み: 内部に直交する3つのせん断型(またはリング型せん断)エレメントを配置し、各軸の加速度信号を個別に出力します。
  • メリット: センサー1個の設置で空間の立体的な振動(3次元挙動)を一度に計測でき、施工の手間や設置スペースを大幅に削減できます。
  • デメリット: 内部構造が複雑化するためサイズや価格が上がり、他軸からの運動が干渉する「軸間干渉(クロスストーク)」の影響を受けやすくなります。

MEMS技術の主要構造・検出方式

MEMS型は、シリコン微細構造を用いて「加速度による微妙な変位や物理現象」を別の電気的変化に変換して検出します。加工法ではなく「どの物理現象で検出するか」で分類されます。

① 静電容量型(Capacitive / 櫛歯構造)

シリコン基板上に「可動電極(櫛歯形)」と「固定電極」を交互に噛み合わせるように配置した、MEMSの最も代表的な構造です。

  • 仕組み: 加速度によって可動マス(可動電極)が変位すると、固定電極との隙間(電極間距離)が変化します。この距離変化に伴う「静電容量の変化」を電気信号として検出します。
  • メリット:直流(0Hz、静的加速度や重力傾斜)から測定可能です。低消費電力で温度変化にも強く、CMOS回路との統合が容易です。
  • デメリット: 容量変化が極めて微小なため、専用のC-V変換回路(ASIC)が必須となり、回路設計の難易度が高くなります。

② ピエゾ抵抗型(Piezoresistive)

可動マスを支えるシリコンバネ(ビーム)の表面に、歪みによって抵抗値が変わる「ピエゾ抵抗層」を形成した構造です。

  • 仕組み: 加速度でマスが動くとビームが撓み、そこに埋め込まれたピエゾ抵抗に機械的歪みが生じます。この抵抗値変化をブリッジ回路で電圧変化として取り出します。
  • メリット: 0Hz(DC)から測定可能で、回路構成がシンプルです。構造が比較的頑丈で、高G衝撃の測定にも適しています。
  • デメリット: 半導体抵抗を用いるため温度依存性が非常に大きく、高精度な測定には回路側での温度補正が不可欠です。また、常時通電するため消費電力がやや高くなります。

③ 熱対流型(Thermal / サーマル式)

機械的な可動部(マスやバネ)を一切持たない、極めて特殊なMEMS構造です。

  • 仕組み: 密閉空間の中央にヒーター、その左右(または前後上下)に熱電対(サーモパイル)を配置し、内部の気体を温めて「熱い気体の球」を作ります。加速度が加わると気体塊が移動し、左右の温度差が生じる原理(熱対流)を利用して検知します。
  • メリット:可動部分(物理的なマス)が存在しないため、数万Gを超える超高衝撃を受けても物理的に破壊されず、卓越した耐久性を誇ります。
  • デメリット: ヒーターを常時加熱する必要があるため消費電力が大きくなります。また、熱の移動を利用するため応答速度(周波数帯域)が他の方式に比べて遅くなります。

④ MEMS圧電型(Piezoelectric MEMS / 薄膜圧電型)

MEMSの可動ビーム表面に、PZTやAlN(窒化アルミニウム)などの「圧電薄膜」をコーティングした構造です。

  • 仕組み: 加速度によって可動ビームが撓むと、表面の圧電薄膜に歪みが生じ、圧電効果によって直接電荷(電圧)が発生します。
  • メリット: 信号発生自体に外部電源をほぼ必要としないため、超低消費電力を実現できます。応答速度が速く、広帯域な振動測定が可能です。
  • デメリット: バルク圧電型と同様に0Hz(直流・重力傾斜)の測定ができません。また、薄膜圧電体の結晶性を均一に成膜する製造難易度が高いです。

構造・方式別の比較一覧

技術区分 構造・検出方式 0Hz(DC)測定 主なメリット 主なデメリット
バルク(圧電型)
※圧電セラミックスや水晶の「塊」を使用
圧縮型 不可 剛性が高く高周波・高Gに強い ベース歪み・熱変化に弱い
せん断型 不可 熱やベース歪みの影響を受けず超安定 組み立て精度が必要
曲げ型 不可 微小振動に超高感度 衝撃に弱く測定帯域が狭い
リング型せん断 不可 小型・高強度・高安定性を両立 加工精度要求が高くやや高価
三軸一体型 不可 1個で3方向(XYZ)を同時計測 価格が高く軸間干渉への配慮が必要
MEMS(微細加工)
※シリコン基板上の超小型構造を使用
静電容量型 可能 低消費電力、重力(傾斜)検知可能 高精度回路(ASIC)が必須
ピエゾ抵抗型 可能 回路が単純、高G衝撃に対応 温度依存性が大きく消費電力高め
熱対流型 可能 可動部がなく破格の耐衝撃性(数万G) 消費電力が大きく応答が遅い
MEMS圧電型 不可 超低消費電力、高速応答 0Hz不可、薄膜成膜の難易度高

まとめ

加速度センサーは、求める要件によって最適な構造が明確に分かれます。

  • 「高周波の振動・衝撃の精密計測」や「耐環境性」を追及する場合は、過酷な現場に耐えうるバルク圧電型(特にせん断型やリング型せん断)が第一選択となります。
  • 「0Hz(静止状態での傾斜・重力)」の検知や「超小型化・省電力」が必須な場合は、MEMS静電容量型やピエゾ抵抗型が圧倒的な優位性を持ちます。

それぞれの構造的特性と原理を理解することで、用途に最適なセンサー選定が可能となります。


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