コラム
Column
加速度センサー(ピックアップ)の基礎と選定ポイント

目次
はじめに:ノイズだらけの「製品の声」を正確に聴き取るために

「振動試験を行っているが、センサーから出力されるデータにノイズが多くて正しい評価ができない」
「MEMS型と圧電型の加速度センサー、どちらを選べばいいか分からない」
「そもそも、供試品(製品)のどの部分に、どんなセンサーを付ければいいか基準が欲しい」
製品の振動特性や耐久性を正確に評価するために不可欠な「振動測定」。そのデータの信頼性を根底から支えているのが「加速度センサー(ピックアップ)の選定」です。センサーは、製品が上げている「振動」という「声」を聴くためのマイクです。もし、このマイクの選定を間違えれば、いくら高性能なデータロガーやアンプを使用しても、ノイズだらけで使い物にならないデータを算出することになります。
本コラムでは、振動測定の成否を分ける加速度センサーの役割、圧電型とMEMS型の仕組みの違い、そして現場で役立つ「選定のチェックリスト」までを、試験のプロの視点から徹底解説します。
振動試験における「加速度センサー」のきわめて重要な役割
振動試験における加速度センサーの役割は、加振機によって与えられた振動に対して、製品(供試品)が「どのように動いているか(加速度)」を電気信号に変換して計測することです。
具体的には、製品の共振周波数を特定したり、輸送中を想定したランダム振動が正しく製品に入力されているかを確認したり、あるいは耐久試験によって製品の応答特性がどう変化したかを定量的に評価するために使用されます。つまり、センサーの精度が、試験評価そのものの精度に直結します。
加速度センサーの主な種類と「仕組み」の違い(バルク技術 vs MEMS技術)

加速度センサーにはいくつかの方式がありますが、現代の工業製品の試験において主流となっているのは「バルク技術 のバルク圧電型(ピエゾ型)」とMEMS技術の「MEMS静電型(MEMS型)」と「MEMS圧電型(薄膜圧電型)」の3つです。加速度センサーを正しく分類・評価するには、「どのような製造技術でつくられているか(土台)」と、「どのような物理原理で計測するか(中身)」という2つの軸に分解して考慮する必要があります。
センサーの性能を決定づける「2つの軸」
軸①:製造技術(物理的構造の差異)
- バルク技術:単結晶やセラミックスの「塊(Bulk)」を精密に加工・配置する、信頼性の高い従来型の製造技術。
- MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術:半導体製造プロセスを応用し、シリコンウェハ上にマイクロメートル単位の微細な機械構造を一体形成する技術。
軸②:検知原理(物理量の変換方式)
- 圧電方式:加速度による質量(おもり)の移動が圧電素子に作用し、「自己発電(電圧出力)」を行う仕組み。高周波・高応答性に優れる。
- 静電容量方式:加速度による質量の移動が電極間の「隙間の変化」を生み、その静電容量の変化を電気信号として読み取る仕組み。直流(DC)から計測可能。
振動試験で採用される3大加速度センサーの特性比較
| センサーの分類 | 構造と原理の組み合わせ | 振動試験における技術的メリット | 主な適用領域 | |
|---|---|---|---|---|
| バルク圧電型 (ピエゾ型) |
バルク結晶 × 圧電方式 | 高周波応答性(数kHz〜数十kHz)に極めて優れ、高G(衝撃)耐性が高い。自己発電型のためノイズに強い。※ただし直流(0Hz・重力)の計測は不可。 | 自動車部品の耐久試験、製品の落下・衝撃試験、高周波振動解析 | |
| MEMS静電型 (MEMS型) |
シリコン微細構造 × 静電容量方式 | 超小型・軽量であり、試験体への質量負荷を最小限に抑えられる。直流(0Hz)から計測可能なため、定常的な傾きや低周波振動を正確に捉える。 | 構造物の耐震・微振動試験、自動車の乗り心地評価、低周波G計測 | |
| MEMS圧電型 (薄膜圧電型) |
シリコン微細構造 × 薄膜圧電方式 | バルク型が持つ「高周波への強さ・自己発電性」と、MEMS型が持つ「超小型・軽量」という双方の利点を兼ね備えた次世代技術 | 実装基板などの微小部品の振動試験、マルチポイント(多点)同時計測 |
各センサーの細かな解説は別コラムにて実施しておりますので、ご興味のある方は是非そちらもご覧ください。
現場で役立つ!加速度センサーの具体的な「選定チェックリスト」
圧電型かMEMS型かを選ぶ際、あるいは具体的なモデルを決める際に、以下の5つの項目をチェックすることが、測定ミスを防ぐ鉄則です。
- 測定周波数帯域(Frequency Range): 測定したい振動の周波数帯(例えば20Hz〜1kHz)を、センサーの仕様(定格範囲)が完全にカバーしているか。
- 測定加速度範囲(Acceleration Range): 製品に発生する最大加速度(例えば50G)が、センサーの測定範囲(例えば±100G)に収まっているか。
- 環境性(Environment): 試験槽の中(高温・多湿)や、ヒートサイクル試験のように激しい温度変化がある環境か。
- 重量・サイズ: センサー自体が重すぎると、製品の振動特性が変わってしまいます(マス負荷効果)。小型・軽量な製品には超小型のセンサーが必要です。
- ノイズ対策: 周囲に電磁波ノイズが多い環境か。ノイズの影響を抑える「絶縁型」のセンサーや、ケーブルの引き回しの工夫が必要です。
測定精度を極限まで高める、エボルテックの充実した「保有加速度センサー」
「自社で試験を行いたいが、適切なセンサーを持っていない」「特殊な測定に対応できる機材がない」という場合もご安心ください。
エボルテックでは、お客様の製品形状や試験条件、狙いたい周波数帯に合わせて常にベストな測定データが算出できるよう、信頼性の高い高性能な加速度センサー(ピックアップ)を豊富に保有・運用しています。以下は、当社で実際に稼働している代表的なセンサーラインナップです。
- 高感度・高剛性モデル(7201-50など): 微小な振動から、過酷な耐久試験・衝撃試験における大きなG(加速度)まで、ノイズを極限まで抑えてクリアに計測可能。自動車部品をはじめとするタフな環境耐久試験の現場を支える信頼のセンサーです。
- 超小型・軽量モデル(710-Dなど): センサー自体の重さによる影響(マス負荷効果)を極限まで排除。小さな電子基板や超軽量なプラスチック成形品など、極めてデリケートな製品の共振点測定に威力を発揮します。
- 3軸同時計測モデル(703-B3など): X軸・Y軸・Z軸の3方向の振動応答を、1つのセンサーで同時にかつ正確にキャッチ。製品が受ける複雑な3次元の挙動を、複数回試験を繰り返すことなく、スピーディーかつ確実に網羅できます。

▲ エボルテックで実際に運用している、用途に合わせたバルク圧電型加速度センサー(左から:7201-50、710-D、703-B3)
正確な振動測定には、専門知識と最適な「測定システム」の構築が不可欠
ここまでセンサーの選定について解説してきましたが、実は「センサーを選べば終わり」ではありません。
「最適なセンサー」を選んでも、それを受け止める「アンプ(信号増幅器)」の選定、アンプとセンサーを繋ぐ「ケーブル」の引き回し(特に圧電型はチャージケーブルのノイズに敏感)、そして周囲からの「電磁ノイズ」の対策など、センサーからデータロガーへデータが流れる「測定システム全体」が適切に構築されていなければ、正しいエビデンスは取得できません。
エボルテックでは、単に試験機を動かすだけでななく、これまでに多種多様な業界の製品評価を手掛けてきたノウハウを活かし、センサーの選定、システム全体のノイズ対策、そして試験の実施からデータの分析まで、“センサー選定からワンストップ”で、国内外のあらゆる市場で通用する確実なデータをご提供しています。
まとめ & お問い合わせ
振動測定において、センサーは製品の「声」を聴くためのマイクです。データの正確性を左右するセンサー選定の重要性が、少しでも伝わりましたでしょうか。
確実な振動測定なら、エボルテックにお任せください
「この製品にはどのセンサーが最適か分からない」「ノイズ対策に自信がない」という段階からのご相談も大歓迎です。経験豊富なエンジニアが、当社の充実した保有設備と確かな技術力の中から、御社の製品特性に合わせた最適な組み合わせをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください!
また、当社では試験の計画から実施、分析までを“すべてお任せ”いただける完全依頼型受託サービス「Evoltech Service Package」をご用意しております。
遠隔での試験確認サービスや専用の治具設計、供試品の引き取り・納品まで、お客様の手間を最小限に抑える一括サポートが可能です。こちらも是非ご活用ください!







