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揺れの周期と、その再現

同じ震度なのに、壊れるものと壊れないものがある。
揺れの周期と、その再現

2026.09.15

振動試験


室内から窓の外を見ている構図で、地面や建物がわずかに揺れていることを示唆する情景。特定の被災地や被害の様子は描かず、「誰の身の回りにも起こりうる揺れ」という記事のテーマを先取りする。

はじめに──「最近、地震が多い気がする」

スマートフォンが鳴り、ニュースを開くと、震源と各地の震度が一覧で並んでいる。そんな場面が増えてきている——そう感じている方は少なくないのではないでしょうか。

「地震」と一言で言っても、内陸の浅いところで起きる地震もあれば、海側で起きる地震もあり、揺れの伝わり方はそのたびに違います。

報じられる被害の様子も、一様ではありません。近い場所で同じ程度の震度が観測されていても、建物によって被害の大きさがはっきり分かれることがあります。

この違いは、どこから来るのでしょうか。

地震の話題では、マグニチュード、震度、加速度といった数字が並びます。どれも「揺れの大きさ」を表す言葉のように見えますが、指しているものはそれぞれ違います。そして被害の大小を決めているのは、これらの数字だけではないと言われています。

鍵の一つになるのが、揺れの速さ——周期です。今回は、その周期という見方をたどりながら、最後に「揺れを人工的につくって確かめる」という方法についてお話しします。


「規模」と「揺れ」と「加速度」は、別のもの

地震のニュースには、性質の違う数字が同時に登場するので、まずここを分けておきましょう。

マグニチュードは地震の大きさ、震度はその場所の揺れ

マグニチュードは、地震そのものの規模を表す指標です。同じ算定方式であれば、ひとつの地震にひとつの代表値が示されます。ただし算定の方式は複数あり、解析が進むにつれて値が更新されることもあります。

いっぽう震度は、それぞれの場所でどれくらい揺れたかを表す数値です。一般には震源に近いほど大きくなりますが、地盤や地形の条件によって、近くても揺れ方が異なることがあると説明されています。気象庁の震度階級は0から7までで、5と6には「弱」「強」の区別があるため、全体では10の階級に分かれています。

マグニチュードは地震そのものの数字、震度はそれぞれの場所の揺れを表す数字。そう整理すると、「規模は大きいのに、そこではあまり揺れなかった」という状況も理解しやすくなります。

震度は、加速度の大きさだけでは決まらない

では震度は、揺れの加速度をそのまま表しているのでしょうか。実は、そう単純ではありません。

現在の震度は、地震計が記録した揺れの波形をもとに計算されています。その過程では、揺れに含まれる周期の成分に重みがつけられ、さらに強い揺れがどれくらいの時間続いたかも考慮されると説明されています。

一瞬だけ鋭く振れた揺れと、中くらいの強さが長く続いた揺れ。加速度の最大値が同じでも、震度が同じになるとは限りません。震度は、揺れの「強さ」と「速さ」と「長さ」をひとつの数字にまとめたもの、と考えると実態に近くなります。

揺れの中身は、地震ごとに違う

揺れに含まれる周期の成分は、地震の規模、震源の深さ、距離、地下の構造など、さまざまな条件で変わります。

内陸の浅いところで起きる地震では、震源が近いぶん、短時間に強い揺れとなる例が多いとされています。突き上げるような感覚として語られることが多いのは、このタイプです。

いっぽう規模の大きな地震では、ゆっくりとした周期の成分も生じやすく、遠くまで届きます。海溝型の巨大地震で、離れた都市の長周期の揺れが問題になるのはこのためです。船に乗っているような、長く続く揺れとして感じられます。

同じ「震度4」でも体感がまるで違うことがあるのは、こうした中身の差によるものです。


揺れの速さと、ものの揺れやすさ

高さの異なる三つの柱状の構造物が、それぞれ違う速さで左右に揺れている様子を抽象化した図。振り子の長さの違いとして表現し、文字や数値は使わない。「ものによって揺れやすいリズムが違う」という一点だけを伝える構成。

ここからが本題です。揺れの強さが同じでも、壊れるものと壊れないものが出てきます。手がかりは、揺れの側の周期と、ものの側の「揺れやすさ」の関係にあります。

ものには、揺れやすい周期がある

建物でも、棚でも、機械でも、物体を揺らしたあとは、決まったリズムで揺れて止まります。このリズムを固有周期と呼びます。

背が低く硬いものほど、速く小刻みに揺れる。背が高くしなやかなものほど、ゆっくり大きく揺れる。小さな揺れで測った木造住宅ではおよそ0.2〜0.5秒、超高層のビルでは数秒に達するとされています。

身近なところでは、ブランコがそうです。ブランコには、その長さで決まった揺れのリズムがあります。そのリズムを無視して速く押しても遅く押しても、大きくは振れません。

周期が合うと、揺れは「育って」大きくなる

ブランコが大きく振れるのは、押すタイミングがそのブランコのリズムと合ったときだけです。ひと押しの力は小さくても、合っていれば揺れはどんどん大きくなっていきます。

これが共振と呼ばれる現象です。地震でも近いことが起こります。地面の揺れに多く含まれる周期と、その建物の固有周期が近ければ、応答は大きくなりやすい。ずれていれば、相対的に大きくなりにくいことがあります。

どれだけ強く揺れたかより、どの速さで揺れたかが効く場面がある。被害が一律にならない理由のひとつは、ここにあるとされています。

揺れているあいだに、周期は変わる

ただし、固有周期は固定された値ではありません。

大きな地震で建物が変形し、損傷が進むと、硬さが下がって実効的な周期は長くなっていきます。平常時に0.2〜0.5秒だった木造住宅も、揺れているあいだに、より長い周期で揺れる状態へ移っていくことがあると説明されています。

1995年の兵庫県南部地震では、木造住宅に甚大な被害が出ました。このとき記録された揺れには、1秒から2秒程度の周期の成分が多く含まれていたことが知られています。損傷して周期が伸びた建物が、この帯域と噛み合っていったという説明がなされてきました。

もっとも、被害の大きさは周期の関係だけで決まるものではありません。建物の耐力、建てられた年代、地盤の条件も関わります。周期は、いくつかある要因のうちのひとつです。

距離だけでは決まらない

周期の影響は、震源から遠い場所にも及びます。

2011年の東北地方太平洋沖地震では、震源から数百キロ離れた地域でも、高層ビルが長い時間ゆっくりと揺れ続けたことが報告されています。ゆっくりした周期の揺れは遠くまで減りにくく、周期の長い超高層ビルと噛み合ったためだと説明されています。

気象庁はこうした揺れを長周期地震動として扱い、階級による情報を提供しています。2026年7月の令和8年熊本地震でも、熊本県内で長周期地震動階級4が観測されました。通常の震度と長周期地震動階級は必ずしも一致しません。二つの尺度は、性質の違う揺れを見ています。


揺れを、つくって確かめる

加振装置の上に治具で固定された抽象的な対象物を、白背景・低彩度の半写実3Dで表現する。周囲に周波数帯を示す薄い波形を配置し、特定の製品や企業を想起させない構成にする。

揺れによる影響を確かめるために、ものをつくる側は「自分たちのつくったものが、どの周期でどれだけ揺れるのか」を知りたくなります。

その確かめ方は、意外なほど直接的です。

実際に揺らしてみる。

振動試験と呼ばれる方法で、対象を台の上に固定し、狙った揺れを与えて反応を測ります。

揺れやすい周期を探す

まず行われることのひとつが、揺れの速さを少しずつ変えながら加え、対象がどこで大きく振れるかを調べる方法です。

ゆっくりした揺れから速い揺れへ、あるいはその逆へ、連続的に変化させていきます。ある周波数にさしかかったところで振れ幅が跳ね上がれば、そこがその対象の共振点ということになります。ブランコのリズムを、手当たり次第に押して探すようなものです。

どこで大きく揺れるかが分かれば、そこを避けるのか、補強するのか、支え方を変えるのかという判断ができます。何をどこまで調べるかは、対象や適用する規格によって変わります。

現実の揺れは、ひとつの周期ではない

実際の環境に「ひとつの周期だけの揺れ」はほとんどありません。地震も、道路の凹凸も、輸送中の振動も、いろいろな速さの揺れが混ざっています。

そこで、複数の周期を同時に含んだ揺れを与える方法が使われます。このとき決めるのは、単純な大きさではなく、周波数ごとの揺れの強さを表した分布です。PSD(パワースペクトル密度)と呼ばれます。

この配分を変えれば、再現している環境そのものが変わります。同じ「激しく揺らす試験」に見えても、想定している場面は別物になる。試験条件が数字の羅列に見えて、実は環境の記述になっているのはこのためです。


「どこまでの揺れ」を想定するかは、誰が決めるのか

ここまでの話には、まだ触れていない前提があります。試験で与える揺れの条件を、どこかで誰かが決めなければならない、という点です。

同じものでも、床に固定されるのか、車に載るのか、トラックで運ばれるのかで、受ける揺れはまったく違います。建物の中に据え付けられるなら、何階に置かれるかでも変わります。一般には上層ほど応答が大きくなりやすいとされますが、建物の特性によっても変わります。

試験条件の多くは規格に示されていますが、規格によっては複数の方法や厳しさが用意されています。どれを選ぶかは、実際の使われ方を踏まえて決める必要があります。試験機への固定の仕方も結果を左右します。取り付けに使う治具の設計が甘いと治具自体が揺れ、対象に届く揺れが変わるためです。

地震のニュースに並ぶ数字は、起きた揺れを観測して得られる値です。速報では推定値が示され、その後の解析で更新されることもあります。確かめられるのは、揺れたあとです。

いっぽうで、工場の設備も、そこで作られる製品も、まだ起きていない揺れを想定して設計されています。どの周期の揺れが、どれくらいの強さで、どれくらいの時間加わるのか。その想定には、実際にどう使われるかという情報が欠かせません。

製造業の現場では、その想定を確かめる手段として振動試験が使われています。周波数を変えながら揺らして共振点を調べる、実環境に近い揺れを与える、据付や輸送の条件で試す。目的は合否を出すことだけではなく、どこで大きく揺れるのかを把握して、設計や固定方法を決める材料にすることにあります。

同じ震度で壊れるものと壊れないものが分かれるとき、そこには揺れの性質だけでなく、想定条件の違いも含まれているのかもしれません。


参考情報


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エボルテックは、静岡県浜松市で受託試験を行っています。振動試験のほか、温度試験、塵埃(IP)試験、これらを組み合わせた複合環境試験に対応しており、自動車部品、電子機器、産業機器のメーカー様にご利用いただいています。

次のような段階からのご相談を承っています。

  • 試験条件が決まっていない。使用環境の想定から一緒に検討したい
  • 共振点を把握したい。対策の効果を数字で確認したい
  • 治具がない。設計・製作から任せたい
  • 社内に試験設備がない、または順番待ちで開発が止まっている

供試品のお引き取りから試験の実施、分析、報告書の納品までを一貫してお引き受けできるため、ご担当者様の負担を抑えて進められます。ウェアラブルカメラによる遠隔立ち会いにも対応しており、浜松までお越しいただかなくても試験の様子をご確認いただけます。各装置の空き状況はウェブサイトのカレンダーで公開しています。

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本コラムで取り上げた内容に関連する試験については、エボルテックの振動試験もあわせてご覧ください。

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