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なぜ自動車部品には「振動試験」が不可欠なのか?~故障を防ぎ、信頼性を守る試験の基礎~

2025.12.12

なぜ自動車部品には「振動試験」が不可欠なのか?

今回のコラムは改めて振動試験の基礎についてご説明します。

私たちが普段何気なく運転している自動車。その内部には、数万点もの部品が使われています。 これらの部品は、エンジンの振動や路面の凹凸、走行風など、常に過酷な「振動」にさらされ続けています。もし、たった一つの部品が振動に耐えられず破損してしまったら……重大な事故につながる恐れさえあります。

自動車開発において欠かせない「振動試験」の重要性と、その基礎知識についてご覧ください。

1. 振動が引き起こすトラブルとは?

自動車部品における振動トラブルは、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  1. 疲労破壊(金属疲労など)
    • 繰り返される振動によって材料に亀裂が入り、最終的に破損する現象です。ブラケットの折損やはんだクラックなどが代表例です。
  2. 機能低下・誤動作
    • コネクタの接点不良(瞬断)や、センサーの誤検知など、振動を受けている間だけ発生するトラブルも含まれます。
  3. 緩み・脱落
    • ボルトやネジが振動で緩み、部品が外れてしまうケースです。

これらを未然に防ぐために行うのが、開発段階での「振動試験」です。

2. 実際の走行環境を再現する「ランダム振動試験」

振動試験にはいくつかの種類がありますが、自動車部品の評価で特に重要視されるのが「ランダム振動試験」です。

  • 正弦波(サイン)振動試験: 一定の規則的な揺れを与える試験。共振点(揺れが大きくなる周波数)を探すのに適しています。
  • ランダム振動試験: 実際の路面走行時のように、不規則で様々な周波数成分を含んだ揺れを与える試験です。

実際の道路は、綺麗な舗装路もあれば砂利道もあり、揺れ方は一定ではありません。そのため、実車環境に近い負荷をかけられるランダム振動試験が、信頼性評価の主流となっています。

3. 「複合環境試験」の必要性

さらに、自動車は振動だけでなく、真夏の炎天下や真冬の氷点下など、激しい温度変化にもさらされます。 例えば、樹脂部品は低温で硬くなり割れやすくなりますし、高温では柔らかくなり変形しやすくなります。

そこで重要になるのが、「複合環境試験」です。 これは、「振動」+「温度・湿度」を同時に加えて行う試験です。単独の試験では発見できない複合的な要因による故障(例えば、熱膨張と振動が重なった際のはんだ割れなど)を検出することができます。

4. EV(電気自動車)化で変わる振動試験のトレンド

近年急速に進むEV化に伴い、振動試験への要求も変化しています。

  • 静粛性の追求: エンジン音がなくなるため、今まで気にならなかった部品の「共振音」や「ビビリ音」がノイズとして問題視されるようになり、異音検知のニーズが高まっています。
  • 大型部品の評価: バッテリーやインバータなど、重量物の振動試験が必要になっています。

まとめ:確かな品質のために

自動車整備の現場視点で見ても、経年劣化や振動による部品のトラブルは実際に多く発生します。製品が市場に出る前に、適切な試験で「弱点」を見つけ出し、対策を打つことがメーカー様の信頼を守る最後の砦となります。

エボルテックの受託試験サービスセンター(R&T事業部)では、自動車部品の規格(JASO、ISOなど)に対応した振動試験や、大型の複合環境試験装置を備え、皆様の開発・品質保証をサポートしています。

「こんな試験はできる?」「治具の作成から頼みたい」といったご相談も大歓迎です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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